世界のラン産業の行き先


以下のものは、台湾蘭花産鎖発展協会に小生が招かれ、講演した内容である。2003年12月25日のことである。
中国語に同時通訳してもらい、質疑応答では英語で答えさせて頂いた。あくまでも台湾人へ向けての講演であるから、誤解がないように、・・・。本邦初公開の原稿も混在している。


はじめに
1932年生まれの父は製麺業の事業の傍ら、副業で洋ラン園を営んでいたため、1964年生まれの小生は物心が付いたときから回りにたくさんの植物がある環境で育ってきた。千葉大学では花卉を専攻し、その後ハワイ大学のDr.Yoneo Sagawaのもとで交換研修生として在籍していた。専門は植物バイオテクノロジーによる微細繁殖学である。現在は奈良県五條市(富山蘭園)で花の育種を行っており、バイテクによる急速大量増殖の研究者でもあり、大阪府藤井寺市にあるクローン苗生産会社(メリクロンアーツ)の実務者兼経営者でもある。
そのようなバイオ技術を大阪ハイテクノロジー専門学校、大阪動植物海洋専門学校、大阪狭山熟年大学、奈良県農業大学校などでも指導させて頂いている。また園芸書やバイテク専門書を出版させて頂くうちに、テレビ業界から出演依頼があり、現在大阪NHKで「ぐるっと関西プラス」という情報番組で『富山昌克の週末ガーデニング』というコーナーを担当させて頂いている。
マスコミとの関わりで得た、日本人の平均的園芸の価値観を解説し、今後の世界のラン産業の行き先を示唆したいと思う。



【機曚海糧樟さにおける日本の洋ラン事情

この半世紀で「日本の洋ラン文化はどこまで進んだのか?」と聞かれると、『国際ラン展』、『ギフト商品』という2つのキーワードをとりあげて答えていかなければならないと思う。

・『国際ラン展』

東京ドームの国際ラン展を始め、数多くのラン展が日本各地で毎年行われているのを見れば、日本での洋ラン産業は一見、盛況のようにみえる。また、1987年の世界蘭会議の成功以来、大型国際ラン展だけにとどまらず、大阪花博、淡路花博など洋ランだけではなく「花と緑の総合イベント」が行われてきた。イベントの質の高さや華やかさをもっと再評価するべきだろう。この約15年間で、巨大イベントを実行、遂行するといった企画から施工までのシステム作りは完全にクリアしたような感がある。
そもそも30〜40年前のラン展は、絵画展のような趣で、一部の上流階級のためのものであった。そのラン展を、東京ドームで開催できるほどの巨大イベントまで発展させられたのだからすごい変貌ぶりである。さらにその当時のランの品種と現代のランの品種では、全く別物ともいえるほど、豪華に変化した。これは、ラン業界人の育種努力の賜物であり、世界中のラン科植物を輸入してきたラン専門業者の努力の結晶といえるだろう。
しかし、一見盛況に見える国際ラン展にも問題は多々存在している。ラン専門業者のかつての海外の仕入先が同じ土俵に参加すれば、日本のブローカーであるラン専門業者に勝ち目がないことは容易に想像が付く。さらにイベントであるがために、最終日には投げ売り状態になってしまうことが、自らの首を絞める行為になっているのである。来場者が一度でもラン展の最終日を体験してしまうと、「洋ランってこんなに安かったのだ」というイメージだけが残ってしまう。「安く買いたい場合は、最終日に来場すればよい」という考えが生まれてしまうのだ。販売する商品も、普段園芸店で販売されているものを売っても見向きもされないので、小振りのかわいい花付き株をどれだけ用意できたかで、売り上げが左右されるのだ。つまりラン展のためだけの商品構成になってしまうのである。具体的には、「500〜1500円クラスの花付き株」をどれだけ用意できるかで、売り上げが左右される。来場者の中で「珍しい物を探すときは初日に行き、安価に入手したいときは最終日に行く」というような習慣が生まれてきたため、当然、中日はあまり売れ行きがぱっとしない。
また最近、国際ラン展のチケットを業者からただで譲り受け、ディスプレイを見て「わあ〜きれいねえ。でも家では育てられないから〜」といって、ただ見て楽しむだけで帰る来場者が増えてきている。これは過去、ラン展で衝動買いして、枯らしてしまった人に多く見られる傾向である。毎年、「見に来ただけ派」と「手土産程度に買って帰る派」に大きく二分されてきており、あきらかに「見に来ただけ派」が増えてきているのも事実である。



・『ギフト商品としてのラン鉢物』

日本の政治家はギフト商品の価格を1鉢、3万円という感覚で考えている。これは世界から見れば、日本の贈答用の鉢物(ギフト商品)の価格の高さに驚きと憧れを持つかもしれないが、その裏には、日本古来の御中元、お歳暮といった習慣が背景にあったから育ってきたものであるといえる。たまたま日本人の栽培技術の芸が細かかったため、世界一ともいえるクオリティの高い鉢物ができあがった。それは勤勉な日本の民族性から得た結果でもある。もともと世界ではランの切り花しか存在しなかったものを鉢物として普及させてきた姿が日本にはあるのだ。バブル経済を体験し、接待天国とも呼ばれた、高価格で売れる時代があったからこそ、日本の洋ランビジネスは近年、急激に成長してきたのである。このような近年の移り変わりを他国からみれば、日本のランビジネスはおいしそうに見えるのだろう。
しかしそこには日本独特の古来からの儀礼的な贈収賄文化があり、賄賂性の高い品物を送るといった慣習も無視できない。あくまでも御礼の印なのだが、全く下心がないとはいえず、「貢ぎ物を送って、便宜を取り次いでもらう」といった慣習は否めないのだ。豪華な洋ランの鉢物には、上流階級がステータスと感じる賄賂性が確かに存在していたのだ。
1970年代初頭では贈答用鉢物といえばシクラメンであったが、その座を1980年代初頭にシンビジューム鉢物が抜き、その後、1990年代初頭にはファレノプシス鉢物がシンビジュームの座を抜き、2003年の現在もファレノプシスがトップに君臨し続けている。
しかし近年、急激に不況の波がギフト価格にも影響し、年々異常な値下がりをしているのだ。ギフト価格が下がれば、コスト削減を行わない限り、生産者は採算が合わなくなる。採算を合わすためには、もっと安価で、もっと確かなクオリティを持った苗が要求される。つまり国際リレー栽培でしか採算が合わなくなってきているのである。
「卸市場ではシンビジュームのセリ価格は品種で価格が決まっているが、ファレノプシスは生産者によって価格が決まっている」という声を聞いたこともある。景気がよいときは、市場も卸価格を調節できたが、現在の不況下では、質の悪い鉢物は不要なのだろう。それだけ市場の評価が年々厳しくなってきているのである。
シンビジュームもファレノプシスのように、アーチ咲きが登場していて以来、高値がつくようになったので、「どんな品種でもアーチ型にして出荷すればよい」という流行がある。しかし、利益目当てで質の悪いアーチ咲きを出荷してしまうと、せっかく高値のつく質の良いアーチ咲きのイメージまでダウンさせてしまうことに気づかない生産者も多い。



・『温室は普及しなかったが、ガーデニングが台頭する時代となった』

本当の洋ラン文化が根付いていたなら、日本各地にもっと温室が設置された住宅事情になっていたことだろう。しかしマイホームをローンで購入する際に、庭や温室の建設費まで手が回らないという時代背景があったので、この半世紀、温室の需要は伸びていない。また近年、日本の住宅はアルミサッシなどを導入したため、住宅環境が激変し、温暖化現象も伴って、低温性の洋ランは室内での越冬が容易になった。さらに、ラン展では育てやすい温室不要のミニ洋ランなどを普及させてしまったという時代背景も温室を必要としない理由のひとつでもある。
かつては、自宅のローン返済も終わり、子育ても終わり、やっと親としての義務が終了した老後に、はじめてゆっくり洋ランや園芸に目を向けていくといった方も少なくなかった。つまり『園芸=お年寄りの土いじり』というイメージが30年前の園芸のイメージであったのに、ホームセンターの出現により、園芸からエクステリア、ガーデニングとイメージが変わり、『種子から育てる園芸』ではなく、家回りをきれいに飾る、『装飾園芸』が流行ってきたのである。園芸のイメージはガーデニング(造園+園芸)という新しい概念の登場により、園芸世代が広がったことも事実である。
パンジーやペチュニアなどの苗物を購入し、テラコッタに寄せ植えするといった、フラワーアレンジメント顔負けの、根付きポットプラントアレンジメントが流行る時代になってしまったのである。このような時代になると、ますます洋ランという特殊な環境を求める植物は、ガーニング素材としては用いられず、世間の興味は玄関回りの寄せ植えやフェンスに吊り下げるハンギングバスケットなどの装飾園芸が盛んになっていくのである。



・『日本のラン文化とは?』

もともと「松・竹・梅」の原型である四君子「蘭・梅・菊・竹」といった文化を中国から学んでいたのであろう。日本人にとって、蘭のイメージは古来から高貴な花の中でもすこぶる良いイメージを持っているのである。日本人のランをよく想う思想は世界的にも珍しいものであろう。つまり数多くある鉢物のなかでも蘭のステータス性と結びついたのがギフト商品としての始まりだと思われる。しかしバルブ経済がはじけたあと、年々、ギフト商品の価格が下がっていく傾向は否めないし、温室を持つ本当の趣味家が増えたわけではないので、日本において本当の洋ラン文化が定着したとは言い難いのが実状なのであろう。
日本人の平均的なラン文化とは、
その1:春蘭、セッコク、フウラン、ナゴランはやはり有名。知っている人が多い。
その2:オリヅルラン、クンシラン、スズランもランだと思っている。
その3:「ランは高価、ランは栽培が難しい」というイメージを抱いている。
その4:シンビジューム、コチョウランは聞いたことはあるが、ランとの相互関係はわか らない。
その5:真冬の戸外に花がない季節に、ラン展があるということはニュースで知っている。
その6:園芸好きの人たちが知っているランは、第1位コチョウラン、第2位シンビジューム、第3位デンドロビューム、第4位オンシジューム、第5位デンファレ。
その7:温室を持とうとする人は、完全にラン・マニアか、裕福な人たちである。

ギフトで伸びたという時代背景は、園芸文化の進化度合いからいって、不健全であろう。本当の洋ラン文化が根付いた訳ではないと考える背景がここにある。結局、「西洋人の価値観のもとで洋ランを育種し増殖し普及してきた」という半世紀の歴史だったのだ。

・『今後の日本のラン産業の行き先』

今後、日本の景気がすぐに戻るとは思えない。このまま経済が停滞したまま、ずるずるいきそうな時代である。ギフト商品の価格帯はもっと下がっていくかもしれない。そうなれば、国際リレー栽培は必須である。より質の高い苗、より安価な苗を求めてコスト意識を高めないと、採算が合わなくなってしまう時代がすぐに来てしまいそうだ。しかし資本主義の世界では、至極当然なことであり、需要と供給のバランスで、確実に毎年生産者が選抜されていくであろう。政治家や大企業の受付が納得するような立派な鉢物を作れない生産者は消滅してしまうのだ。
まず、花持ちの良さを追求しないとどんなに立派な鉢物を作っても、流通段階や末端の園芸店からクレームがきてしまう。中南米と東南アジアのランを比べると、中南米の方が受粉する昆虫がたくさんいるため、概して中南米由来のランの花持ちは悪いものが多いようだ。つまりファレノプシスやシンビジュームより花持ちの長いものを作らない限り、君臨している座を奪うことができないのだ。アンチセンスの遺伝子を組み込んだ、腐りにくいトマトを作出したように、3〜4ヶ月咲き続けるカトレアなどが育種されれば、未来は変わってくると思われるのだが。
シンビジュームは株の大きさを小さくして、花をアーチ咲きにすれば、ファレノプシスに対抗できるであろう。ホームユースな洋ランは小さくて可愛いものでいいじゃないか?と反論されるかもしれないが、日本の生鮮物は目方や大きさで価格を決めてしまうという雰囲気があるので、小さいものはやはり安価なものになる。つまり生産者が小さな鉢物を作れば作るほど、経営が苦しくなってくるのである。小さなミニ洋ランは市場に出荷せず、ラン専門業者とタイアップして少しでも高く販売できるように、カタログやHPを作り通信販売ではかしていくしか方法がないだろう。デパートで行うラン展も年々減少気味な傾向にあるため、今後は真剣に営業に取り組まなければならない。



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・『マスコミとブーム』

日本でサンセベリア(トラノオ、和名チトセラン)が爆発的に売れていたことがあった。それまでのサンセベリアといえば、レンタル観葉植物というイメージが強く、地下街や病院にそれとなく置いてあるといった、あまりパッとしない観葉植物というイメージであった。しかし『トラノオとマイナスイオンの関係』が2002年1月27日にテレビ番組で放映されてから、ブームに火がついた。残念ながらその番組を見逃してしまったのだが、噂を耳にしたのですぐさまインターネットでその番組のホームページをチェックし、プリントアウトしたものを手元に保存している。マイナスイオンというもの自体、はっきりしないものであり、トラノオが出すマイナスイオン量の結果もどうのこうのいうことができないものなので、評価のしようがないのであるが、テレビ番組というものが、視聴者に与える影響は非常に大きい。サンセベリアが飛ぶように売れたことは間違いはない事実である。中国からわざわざ輸入されていたこともあるほどだ。しかし現在ではブームも落ち着き、市場にはだぶつき始めている。
昼間の奥様情報番組で取り上げた健康食品や野菜などはその日の市場から消えてしまうということもよく耳にする。つまりこのような民放番組に洋ランを取り上げてもらうのが突破口を開く一番の近道であろう。



・『次世代の新たな洋ランの代名詞とは?』

民放番組に取り上げてもらっても、ただ『きれい』、『豪華』、『癒し効果がある』だけでは、今やインパクトにかけるのも事実である。『豪華絢爛のきれいな洋ラン』といっても、爆発的なブームは起こらないだろう。これからの時代は、『混沌のなかの安定(癒し)』、『異常気象(環境)からの正常化』、『人と洋ランとの密接した新たな複合関与』などが要求されてくるであろう。つまり、『植物と健康』、『植物とクリーンな環境』など植物と関わることで起こる『人に有益な副産物』を提供しなければならない時代に突入していると思われる。洋ランという、単子葉植物で進化の頂点に行き着いた植物群の人への複合的な役割を世間は要求してきているのである。

キーワードは、以下のようである。

エコガーデン:リサイクル園芸
エコグリ−ンハウス:リサイクル施設園芸
ビオガーデン:自然を意識したガーデニング
パーマカルチャー:自給自足できる次世代園芸空間
アロマセラピー:花・香草などの香りをかいでストレスを軽減し、心身の健康をは かる療法。芳香療法。
園芸療法:園芸を通じて心身の健康をはかる療法
薬用植物:医薬として用い、医薬の原料とする植物。
エコ・フレンドリー ハウス プラント:室内の空気をきれいにする植物
フィサンチッド:植物から発散され微生物を殺す作用のある物質
アレロパシー:植物から放出される物質が他の植物や微生物に影響を及ぼす現象
*マイナスイオン:自然環境下の大気とマイナス空気イオン欠乏症
(*参考文献:マイナスイオンハンドブック 藤野薫編著 せせらぎ出版 \1238)

などが考えられる。
環境問題を得意とする業界とタイアップして、もっと洋ランの秘められた謎、パワーなどを解析し、人間生活になくてはならない存在価値、つまり生活の中の洋ランのアイデンティティーを確立させる必要がある。
さらに、「なぜわれわれはラン科植物を愛するのか?」といった『園芸心理学』も分析する必要があるし、もっと「洋ランに要求されるものはなにか?」というマーケティングを行う必要性がある。

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・『園芸番組に届けられる質問』
現在、小生が受け持っている関西版の某園芸番組に寄せられる質問のなかで、なんといっても、『シンビジュームに関する質問』が圧倒的に多い。ダントツである。日本国民の大半がシンビジュームの栽培に苦心しているのだ。この理由は以下のようなことが考えられる。
1、以前は高嶺の花だったシンビが、安価に日本全国に出回っている
2、シンビジュームは簡単には枯れない
3、開花させられる人と開花させられない人にはっきり分かれる
この現象は「他の洋ランには当てはまらない」ことを念頭に置いて話を進めよう。



3月上旬、関西では戸外で花芽が上がってくる。

こんな古い品種は戸外での花上がりが抜群!見直すべき!

2番目に多い質問は、ファレノプシスである。現在の市場状態をみれば至極当然であろう。この理由も以下のことが考えれれる。
1、贈答用としての地位を確立して、市場に出回っている
2、ファレノプシスは2番花が楽しめる
3、株を維持できる人と完全に枯らしてしまう人にはっきり分かれる

ファレノプシス生産者によると、「シンビジュームは枯らさないけれど、咲かせにくい。ファレノプシスは枯らしてしまうこともあるが、咲かせやすい。温度変化で咲いてくれるから簡単なんだよ!」とのことである。さらに「寒さで枯らすのではなく、寒いときの水やりのしすぎで枯らしてしまう。越冬する温度帯よりも水のやりすぎ問題で枯らしてしまうことが圧倒的に多い。」ということである。寒がるといった否定語はよろしくないようだ。マスコミ関係各社に啓蒙していかなければいけないことかもしれない。



3番目に多いのはデンドロビュームである。これは洋ラン展においてデンドロ生産者と結託してわが業界が販売促進し広めてきた結果であろう。現在の大型国際ラン展の即売会場を見ていると、やはり販売商品の多くはデンドロビュームが占める。これには以下の理由が考えられる。
1、手頃な持ち帰りやすい小型・安価商品が多く、バラエティに富んでいる
2、温室不要論が説明しやすいが、デンファレ系もキンギアナム系も同じ扱いを受け て、ラン展での安易な商品説明をされている
3、一般家庭でも開花しやすいが、花芽分化条件がまだ完全に広まっていない
ということである。



バック咲きタイプは、特に一般家庭でも開花させやすい。生産者が来年花を付けるバルブをすでに育ててくれているためである。洋ラン展にくるたびに、違う色目のデンドロビューム・ノビル系を手土産程度に購入してしまうといったことはよく見られる光景である。
さらにシンビジューム、ファレノプシスとも春から秋にかけて株(葉)をつくり、秋から春にかけて花茎を育てて開花させるといった、年2回の大イベント(株づくりと花茎伸ばし)をこなす必要があるが、デンドロビュームの花茎は短いものが多いので、バルブを育てるだけで、あっという間に容易に開花してくれるという開花特性の利点も理解しておかなければいけない。

その後の質問順位は、カトレア、オンシジュームと続くが、上位3位までのものとは比べものにならないほど極端に減ってしまう。それだけ世の中に出回っている絶対数が少ないか、購入してもすぐに枯らしてしまっているかのどちらかであろう。
このように、世の中の現実は、ラン専門業者から言って、あまり興味のわかないものばかりなのかもしれない。「そのようなものをランだと喜んでいるような人はランの趣味家ではないじゃないか!」とお叱りを受けそうだが、そのようなシンビ・ファレ・デンドロしか知らない方たちを我が業界にどう誘導するかが、今後益々重要な営業戦略の要の一つといえよう。

・『日本国内のガーデニング変換期』

ガーデニングブームが起こったため、やはり時代は確実に進んでいるようだ。さらに『コンテナガーデン』という、ガーデニングの雰囲気を醸し出す世界観が一般女性の心を捉えたようである。何でもかんでも寄せ植えする。一見無謀のようだが、世の女性に受け入れられているのだからしかたがない。かといって、洋ランの寄せ植えで販売していくかという安易な方向付けはお奨めできない。現在のコンテナガーデンとは、『ポットプラント・アレンジメント』といっても過言ではない。すなわち『根付きフラワーアレンジメント』のようなもので、一瞬でも美しければいいようだ。バランスが崩れていくといつの間にか、裏庭に放置されるという結末を迎えていくだけなのだが。
簡単にガーデニングを満喫できる手軽さが受けているのであろう。素焼き鉢を『テラコッタ』と呼び、『ラティス』で玄関先にガーデニングの空間を作る。そこには『ハンギングバスケット』から溢れんばかりの草花が咲き乱れ、つる性植物が『ファントレリス』に巻き付き、レンガ敷きの『アプローチ』が優雅に出迎えてくれる。このようなガーデニング用語や手軽な空間づくりもブームの火付け役になっていたのであろう。洋ランの新たなおしゃれな用語を啓蒙するといったことがポイントかもしれない。



・『サフィニアの驚異』

そんなガーデニング業界でも唯一驚異に感じるのはやはりサントリーのサフィニア(ペチュニアの1種)であろう。サフィニアの登場によりヨーロッパの風景も変わってしまったと言われている。今から20年前の千葉大学時代に恩師の安藤敏夫博士がアルゼンチンからペチュニアの原種の種子を持ち帰られ、随分農場で遊んだものだ。匍匐していく様は凄いとしか言いようがない。「ハンギングバスケットにしたらきれいだよね」といっていた先輩の言葉が昨日のように思い出される。現在世界中の街角を席巻しているのは周知の事実である。たった300円弱で5月から11月まで花が楽しめるのだから、小生もただただ感嘆してしまう。ピンチ(切り戻し)することで株がどんどん大きくなっていくので、毎年見ていても感動する。現在は競合するよく似た苗が他メーカーから販売されてたくさん市場に出回っているが、やはり本家のサフィニア・パープルはすごいものである。
サフィニアがなくなる11月から翌年の5月までは、お決まりのパンジー、ビオラが登場する。毎年いつも同じだと、いつか飽きられてしまう。結局、『季節ものの鉢物栽培』に戻ってきているのが、現在の園芸事情だろう。
ガーデニング素材と洋ランはあまりにもジャンルが異なるものだから、つい関係ないと思われがちだが、消費者はどこかにお金を落としているのである。年間に園芸に使う金額も毎年マーケティングされているものだから、一度確認してみるのも今後の指針を決定するのに役立つであろう。
またガーデニングにおける脇役素材、カラーリーフなどもなおざりできない存在になってきている。はっきりいって単価が安い。関係ないとタカをくくりそうだが、そんなところにお金が落ちていくのである。サフィニア同様に秋までの入れ替え素材としてコリウスなども馬鹿にできない。日陰にはホスタ、違う雰囲気を醸し出すシルバーリーフなど、確かに日本の園芸は変わってしまった。園芸ではなくガーデニングと呼ぶのだから。
わが業界の洋ランたちは温室で栽培され、開花したら洋ラン展などで披露される。その他デパート、花屋、ホームセンターなど様々なところで展示され販売される。しかし、散歩していて見かける玄関先のガーデニングとは訳が違う。ガーデニングは日本各地の住宅街でガーデニング展を開催されているようなものであるから、インパクトが強く、記憶されるのに差が生じて当たり前であろう。
今後、ガーデニングと洋ラン業界はどう接していくのか、考えていく必要がある。明らかに見せびらかす頻度に差がありすぎているからだ。
結局、今はやりのコンテナガーデンは、洋ラン展のディスプレイの超小型版だと感じる。たった1〜2週間輝かせるために、贅沢な寄せ植えディスプレイを作り、一時の美しさを堪能したら、また単鉢に分けて栽培していくといったシステムなのだ。一般人にとって、洋ラン展のディスプレイは絶対に真似できるものではない。予算面、場所など考えれば、一般家庭では絶対に不可能である。しかし我が業界はこの15年間、日本国中で、日本人を魅了してきたのである。その優雅な洗脳が、今の一般家庭版のコンテナガーデンに繋がっているような気がしてならないのだ。

【検枡本人から見た台湾の問題点(筆者の独断と偏見による提言)

台湾のラン産業のイメージは、カトレアやファレノプシスの育種が盛んというものである。英国人、米国人、日本人が思いもつかない組合せの交配を行ってきた歴史が素晴らしい。さらに増やして作るといった点は、どこの国よりも積極性を感じるので、尊敬している。
しかし敢えて苦言を言わせて頂くと、ウイルスに対する対策がどこまで行われているのかという点である。以前、台湾からカトレアを輸入したことが何度かあったが、どうもウイルスに感染しているものが多いような気がした。現在はそのようなことに対しても対処されておられると思うのだが、筆者だけに限らず、日本のラン業界人の一般的なイメージとして、ウイルス問題があるように思う。
ファレノプシスに関しては、台湾の苗の良さをどうアピールしていくかが今後の課題であろう。以前、日本のファレノプシス生産者が輸入した苗のなかに、全く花芽が出てこない苗があったと聞いている。一度でもこのような事態があると、信頼を回復させるまでには、長い年月を要することになる。
日本のファレノプシスの作型には、関東作りと愛知作りという2つがある。販売する生産者によって、その作型にあった苗の質を提供する必要がある。つまり懇切丁寧な営業と開花記録の積み重ねによって信頼が少しずつ築き上げられるので、苗の品質には特に気を遣う必要があるのだ。

国際ラン展などの最終日に、「3株1000円」というフレーズで売られているのも、日本人にはあまりよい印象が残らない。自国へ持って帰ることが不可能ならば仕方ないことであろうと思うが、投げ売りというイメージは否めないし、品質の低いものと思われがちになってしまう。販売員のフレーズを変化させるなどして、あまり下品に感じられないような接客態度に改善していく必要があると思われる。購入した苗が、一度でも悪い品質であれば、二度と購入してもらえないからだ。
おそらく民族性の違いからだと思うが「売れ残りを避けるためには、なにをやってもよい」という考え方では、日本人との取引は難しいと思われる。日本では、野菜などの価格が暴落しそうなときは、自ら廃棄処分を行うなどして品質、価格を維持しようとする傾向がある。第一に、業者と消費者の信頼関係が重視されることを再度理解していただきたいものである。

台湾におけるファレノプシスの栽培においては、ファレノプシスにとって暑すぎる温度環境に対応するため、遮光を多めにして、パット アンド ファン法によって温度を下げ、水・肥料を多めにして育てられていると聞いている。この方法だと、確かに目に見えて株は大きくなるが、日本の関東作りを好む生産者にとっては、苗が『菜っ葉』に見えて、敬遠されてしまうようである。菜っ葉ではなく、樹木のような株に仕立て上げる方法も必要なのだ。そのためには、赤道直下の地域でも温度変化が少なく、標高が高いところだとファレノプシスにとっても栽培しやすい環境下が存在するので、そのような場所をどう利用していくかが今後の課題であろうと思う。タイ米と新潟の米の味が異なることと論理は同じであろう。品種の違いではなく、環境による作り方の違いによって株の出来が左右されるのである。大きくて柔らかい葉だけで構成された株では充分でないということを再確認してもらいたい。

【后枌羚颪鮠暖饕呂箸靴得鑪をたてるには?

ラン産業は、経済的に成熟した国より、経済が発展途上で、ある程度貧富の差が生じた経済事情の方が、取引しやすいようである。強烈な洋ランというイメージ戦略の立案を発展途上の国々にアピールしていく必要がある。世界的に台湾のファレノプシス苗を販売していきたいのなら、台湾の生産業者が集まって出資し、『国際ファレノプシス協会』などを作り、世界各地へ営業に回る必要があるだろう。そして、発展途上の国々の大企業の受付にはいつもギフトとして最高級ファレノプシス鉢物が飾られ、冠婚葬祭にはいつもカトレアの花々で埋め尽くされ、出産祝いにはいつもバンダの切り花が送られるといった具合に、人間の節目の儀式に必ず洋ランを取りいれ、大企業、政治家、マフィアの前には最高級のファレノプシスがいつも飾られているようになると、発展途上国で洋ラン文化が芽生えてくるであろう。このような最高級のイメージを定着させるには、『国際ファレノプシス協会』が許可した鉢物のみを出荷し、飾ることができるといったシステムを構築し、品質を維持し続ける必要がある。この自らの厳しい品質チェックが、近未来において、台湾胡蝶蘭王国ブランドを産み出す動力となるであろう。
中国、上海などで、マスコミとタイアップして、どんどんTVに登場させることが重要であろう。トレンディドラマに洋ランを必ず登場させるとか、中国・上海の上流階級の生活に定着させることが責務であろう。今、売れたらそれでよい、という考え方は絶対に改めた方がよいであろう。

・『近未来、日本国が崩壊する時に訪れる選択肢』

近未来に、日本国の経済事情が悪化を辿り、崩壊を招くというようなことも否定できない複雑な時代に突入してきたようだ。日本がこのまま米国の51番目の州になってしまうのか、それとも欧州のように中国・台湾・日本・ベトナム・ミャンマー・フィリピンなどのアジア一帯の貨幣が共通になる(仮称:アジアン)といった未来像になるのかは、誰にも予測は建てられない。しかし、できることなら同じアジア人として、欧州連合、米国と対等な経済政策を行っていけたらと願っている。

・『最後の展望』

物作りの原点は、高品質なものを提供することであり、いくら払ってもほしいと思わせる斬新に変化したものであり、努力すれば必ずもてはやされるといった、誇りある商品作りに没頭していきたいものである。自国産業で自国消費できない場合は、冷静に世界的にマーケッティングし、どこにどう売り込めば、どういう方法で使ってもらえるのかという精密な計画をたてた上で、輸出産業として育てていきたいものである。
 「西洋人はランを買うときに悩み、日本人はランを買ってから悩む」と言われるように、10ドルが高いと思う西洋人の花の価値観と、日本人の花の価値観は明らかに異なるわけで、民族の違いによる価値観の違いも徹底的に調査するべきであろう。
サンダースリストを作った人は偉大であり、それを見習ってきたラン業界人も偉いわけだが、その世界観を作り上げた英国人が一番偉いのである。台湾で英国を越える新しいオリジナルなシステムを構築し、今後200年は西洋人を巻き込んだ展開になってほしいと思うのは日本人である筆者だけであろうか?同じアジア人として、同胞として戦っていきたいと願う。西洋人が作った世界観を越える価値観が生まれれば、新しい世界観を作ったものが次の時代のオリジナルになり、ブランドとなって中心的存在となるのである。



*下の表は、大幅にずれています。申し訳ありません。右の行をずらしてご覧下さい!
★追記;日本人の興味【NHK趣味の園芸からのデータ】

苦心している植物【鉢植え】 【庭植え】

順位  解答内容       合計 順位  解答内容   合計
1    シンビジューム   1,832 1   バラ 2,043
2   クンシラン    1,044  2   ボタン 1,028
3   デンドロビューム  964 3   果樹 944
4   バラ        865 4   シャクナゲ 539
5 ラン 846 5  ツバキ 537
6 ハーブ 765 6  シャクヤク 516
7   カトレア 664 7   ハナミズキ 502
8   ファレノプシス 590 8   ハーブ 491
9   山野草 582 9   ウメ 490
10  シクラメン 571 10  山野草 468
11  ボタン 530 11  マツ 445
12  シャコバサボテン 526 12  ツツジ 435
13  コチョウラン 440 13  ユリ 388
14  サツキ 428 14  キク 382
15  洋ラン 426 15  サツキ 300
16  観葉植物 392 16  アジサイ 269
17  ベゴニア 358 17  クレマチス 255
18  エビネ 345 18  エビネ 252
19  セントポーリア 344 19  フジ 211
20  キク 335 20  カキ 208
21  クレマチス 309 21  モモ 198
22  シャクナゲ 305 22  サクランボ 193
23  果樹 300 23  ジャーマンアイリス 198
24  クジャクサボテン 291 24  スイセン 157
25  月下美人 290 25  サルスベリ 152
26  ユリ 276 26  クチナシ 143
27  スパシフィラム 226 27  モミジ 141
28  オンジューム 221 28  キンモクセイ 134
29  フクシア 216 29  観葉植物 133
30  サボテン 210 30  水生植物 132


【大阪NHK『とっておき関西ガーデニングコーナー』からのデータ】
番組に寄せられた質問 上位抜粋
【鉢植え・庭植え】 【環境問題】
順位 順位
1 シンビジューム 1 水やり法
2 コチョウラン 2 寄せ植え
3 デンドロビューム 3 日当たり
4 シクラメン 4 温室
5 アジサイ 5 土
6 スイセン
7 カトレア 【病害虫】
8 ハイビスカス 順位
9 バラ 1 ネキリムシ
10 ミニバラ 2 カイガラムシ
11 金のなる木 3 カビ
12 ブルーベリー 4 害虫
13 ポインセチア 5 うどん粉病
14 ベゴニア
15 シャコバサボテン



★追記;シンビジュームは洋ランではないのか?
【シンビジューム編】

ラン専門業者の間ではシンビジュームを洋ランと認識しにくい傾向もある。生産者が世界一の栽培技術で作った贈答品は、いくらラン専門業者に施設園芸の設備が揃っていると言っても、雑居温室の中ではなかなか作り直せない現実もある。だから売れ残りを作り直す気もなく消耗品感覚の商品の一つとして扱ってしまう。ここに業界としての次世代のヒントが隠されているのかもしれない。
つまり、日本国民の多くはいまだに洋ランよりもシンビジュームの方が気になっているのだ。多くの人がシンビジュームとランが別に存在しているような常識を持ち合わせている。今一度、ラン専門業者が筆頭になってシンビジューム・ファンに対する栽培指導というラブコールを送ってみるのも、今後の新たな市場開拓になるかもしれない。

シンビジュームという鉢物のイメージ

いろんな方に尋ねてみたら、やはり『もらいもの(贈答商品)』、『正月の花』というイメージが大きいようだ。また「シンビジュームはランの一種」ということを知っている方は、他の草花と比べて非常に花持ちがよいものだから、「やはりランは違う」という認識を持って下さる方も多い。初めて自分で咲かせた人は、うれしくて人に話す。自慢でありランを開花させられたという自信ができる。しかし咲かせることができない人は、ずっと咲かない理由を気にしているものだ。最低の植え替え、適切な光が当たる置き場、水やりの季節的変動、肥料やりに気を配れば、最低でも1本の花茎は出てくるはずなのに、これができる人とできない人に極端に分かれてしまっている。
「毎年戸外に置き去りでも何もしなくても花が咲くよ」という方は結局のところ、置き場の環境がシンビジュームになじみ合ってきたのであろう。そのなかには花茎を何十本も出して豪華に咲かせている人もたくさんいらっしゃるようである。
今年初春に、小生が温室を使わずに1本だけを開花させた株を恥ずかしげもなく(ホントは死ぬほど恥ずかしかった・・・。一応、自称プロなのに)、某園芸番組で披露したところ、その後、反響がたくさんあり、視聴者の皆さんからたくさんの写真入りのお手紙を頂いた。
このようにランの始まりの現実は結局シンビジュームなのである。この現実に目を向けなければ、「ランは難しいもの」というイメージはぬぐい去れないと思うのだが・・・。

今後のシンビジュームへの要望

洋ランという範疇のなかで、ガーデニングに唯一対抗できるものといえば、やはりシンビジューム以外はないのかしれない。地植可能なシンビジュームの開発など、まだまだ将来有望な可能性を秘めた遺伝資源なのである。常緑性でなくてもよい、宿根草のようなものに変貌しても構わない。シンビジューム育種家から馬鹿にされても構わない、勇気をもって提唱したい。今後のシンビジュームの方向性を。

・観葉シンビジューム
花が咲かない株を観葉植物として捉えられないだろうか?今後の新品種は全てシンビジュームの斑入り品種を提供していく。そうすれば、ハバカリさん(葉ばかりの花が咲かない株)になっても鑑賞価値があるのなら、インドアグリーンとして室内装飾として多用されるであろう。葉緑素阻害剤というものをご存じだろうか?試してみる価値はあるであろう。



・実が楽しめるシンビジューム
『花も実も楽しめるシンビジューム』を作出できないだろうか?食べられる果実方面への育種である。レモンの鉢植えが最近ブームになっていることから、花より団子という方に提供できるような新たな方向性を考えてほしいものである。せめて食べられないにしろ、葉、花、蘂柱、根、果実などにアロエのような薬効があれば、またイメージも随分変わってくるのだが。

・真美志蘭(シンビシラン)の開発
大学で植物分類学を学び、交雑親和性も理解した上で、こんな馬鹿げた提案をするのは非常に心苦しいのだが、シラン(Bletilla striata、紫蘭)のようなシンビジュームを作出できないだろうか?つまりガーデニング素材としてのシンビジュームである。庭植えしておけば、毎年決まって花を付けてくれる常緑の多年草としてのデビューである。シンビジューム生産者が作れば、贈答用の超巨大輪を付ける鉢物になり、贈答された消費者は花後、庭植えするのである。当然、植えっぱなしの放任栽培だから、小輪の花を可憐にか細く着けるといったことを繰り返し、頂いた方も従来のように枯らしたり、花が咲かないといった悩みから開放されるわけである。しかし同じ品種にも関わらず、デパートに並ぶ贈答用商品の株姿、花着きなどは比べものにならないくらい豪華絢爛な立派なものが立ち並んでいるのである。つまり庭植えすると『シンビシラン』というネーミングで呼ばれ、贈答用商品は『真美姿蘭』、『真美志蘭』などという『しんびしらん』に当て字した豪華な名称を捧げ、差別化するのである。消費者も満足するに違いない。10年位前に某洋ラン情報誌において「シュンランとシンビジュームとの雑種で庭植えして開花している」といった広告を拝見した記憶が残っているのだが、あの庭植えシンビの後代(子孫)はどうなってしまったのであろうか?

・小型シンビジュームの開発
現在のシンビジュームのコンプレックスは超大型の品種は、以前に比べ減ってきたが、一般家庭ではまだまだ株姿が多きすぎるような気がする。シンビジュームを咲かせられるようになった人は、必ずシンビジュームの欠点として『場所をとる』といったことを指摘される人が多い。シンビジューム育種の権威である河野通郎氏がもうすでに手がけておられると思うのだが、一刻も早くホームユース的な品種の作出成功に祈りを捧げたい。しかし全てが全て、小さくすればよいものでもない。不景気だから、デフレだからといって、単価が低価格のものばかり生産すれば、当然利益率が低くなり、それだけ大規模作付けに移行せざるを得なくなるからだ。

現在のような不景気な状態で、ものが売れない世の中で、以下のことを提案するのは心苦しい。どれもこれも馬鹿げたことかもしれない。しかしシンビジュームを使った新たな方向性を探すための提案である。

・世界各国のガーデニングショーに日本製最高峰のシンビジューム品種を出品する。
・RHSなどの会報に日本製最高峰のシンビジューム品種を掲載してもらい、日本人 が洋ランを育種すれば、ここまで変貌させることができるということをアピールする。
・国際ラン展でなく、単一作物を用いてシンビジューム展、ファレノプシス展など
あえて大都会でイベントを行う(一部地域では開催されているようだ)。
・シンビジュームと他の植物を使った寄せ植えアレンジ
(従来の単なる寄せ植えではなく、何か新たな意味を持たせたもの)
・ハンギングバスケット仕立てのシンビジューム
・1年中咲きつづけるシンビジュームの開発
・アクアリューム内で水草扱いできるシンビジュームの開発。
・休耕田での『シンビ苗植え』生産システム開発(稲作の模倣)
・シンビジューム‘福の神’のような素晴らしいネーミングをどんどん造語する。

最後の‘福の神’というようなネーミングは受験生にとってすごく勇気がわいてくるものである。‘敵に勝つ’といった受験生にステーキとトンカツを食べさせる習慣より、ずっと品のあることだと思う。大手予備校と提携して、『受験生のなくてはならない神聖なる鉢物』として定着させることはできないだろうか?

育種の重要性(属間雑種の可能性)
以下、交雑親和性を無視した上での、短絡的な思いつきな列挙である。これもシンビジューム育種家に笑われるかもしれない。馬鹿にされるかもしれない。小生は千葉大学時代、植物生理学、植物分類学などの様々な園芸学の基礎を学んできた。父からは大陸が異なる原種同士の交配は不可能なことが多いとも、門前の小僧的に習ってきた。しかしそんな教えも無視して将来のラン業界のために敢えて行いたいと思う。
どれだけエライ大学教授が交配しても、小学生の子供が交配しても、結果はすべて『できちゃった育種』になるのだから・・・。

シンビ×シラン
シンビジューム×セロジネ
シンビジューム×マキシラリア
プレオネ×シラン×シンビジューム
シンビジューム×ジゴペタルム
野生ラン×シンビジューム

真面目に属間雑種の可能性を考えてみよう。以下は過去開発されたシンビジュームの人工属の列挙である(シンビジュームが関与した人工属にチェックミスがあった場合はご容赦願いたい)。

人工属名 (読み方) 略号 親に使われた構成属
Cymasetum (シマセツム) Cymst. Catasetum × Cymbidium
Cymphiella(シンフィエラ) Cymph Cymbidium × Eulophiella
Grammatocymbidium(グラマトシンビジウム)Grcym. Cymbidium × Grammatophyllum
Phaiocymbidium(ファイオシンビジウム) Phcym. Cymbidium × Phaius
Thompsonara(トンプソナラ) Thmpa. Catasetum × Cymbidium ×Grammatophyllum

ユーロフィエラ属やグラマトフィラム属はシンビジウム属と同じ、キルトポジウム亜連に属するので、交雑できても不思議ではない。つまりこのキルトポジウム亜連に属する近縁属(アンセリア、シンジディエラ、キルトポジウム、ガレアンドラなど)はすべて属間雑種ができる可能性があるのだ。
カタセタム属との雑種ができているとなれば、カタセタム亜連に属するクロウエシア属、シェクノチス属、モルオデス属とも可能性は高い。もっと広く考えれば、シンビジウム連に属するすべての近縁属と交雑できる可能性がある。このシンビジウム連には、オンシジウム属やオドントグロッサム属などが含まれている。
最後に希望的観測になるが、小生がここまでシンビジューム属にこだわる理由はここにある。ファイウス属との雑種、ファイオシンビジウムという人工属が存在していることに注目したい。そうファイウスとはガンゼキランのことである。ファイウス属はアレスサ連に属するもので、このアレスサ連にシラン、ブレティラ属も入っているのである。道はそう遠くないだろう。(分類に付いて詳細は、拙著「ラン科植物のクローン増殖 トンボ出版」のp298〜299、p331〜342を参照、交雑不和合性の打破については、のp25〜27を参照)


★追記;ラン専門業者の今後の方針編
【ラン専門業者の行き先編】

洋ラン専門業者が担うカルチャーセンターと愛好団体との住み分け

高齢化する時代に突入していく中で、高齢者層に向けた「生涯学習」的な新たな『洋ラン学』をも再構築する必要がある。都市であろうが、地方であろうが、カルチャーセンターを馬鹿にしてはならない。カルチャーセンターとは趣味家の愛好家団体とは異なる。趣味家の愛好団体は、毎年、客サイドがどんどん力をつけてくる。最終的には客サイドがセミプロ的に動いていくのだから、業者側が太刀打ちできない。営利を目的とした業者と営利を目的としない愛好団体とでは目的が当然異なるはずだが、愛好団体のなかで平然と売買(交換会)が行われているのも事実である。やはりわが業界ではその売買(交換会)行為自体が驚異となってくる。当たり前である。近くに栽培を指導してくれる優しい指導者が「この株はいいよ」っと言えば、当然譲り受けたく(購入したく)なるものだからだ。
音楽媒体のCDなどもCDメーカー側とレンタル団体、カラオケ団体と法的に住み分けがなされているだろう。そこが重要なのである。悲しいかな、我が業界には種苗法は存在しても、購入したアマチュア側と洋ラン専門業者側には法的な住み分けがなされていないところに、業者を弱小化していく歪みが存在しているのであろう。つまり今後は、愛好団体よりも業者側が主導権を握って行えるカルチャーセンターが重要なのである。ラン専門業者が先導を切って、カリスマ講師となり、新たなカルチャーセンターを起こし、お客をもてなすと言った地道な営業戦略が必要となる。急務である。

デパート不要論に匹敵する考え方
従来のラン専門業者は珍しいものを輸入し、生産者も市場も持っていないものを売っていたからこそ、ラン専門業者としてのアイデンティティーがあった。ラン専門業者の基本は貿易商である。現在は多種多様なビジネス形態に変化してきたが、基本は一般人が持ち得ない珍しいものをもっているところに醍醐味がある。しかし最近はランの原種がホームセンターでも販売されている時代だから、現在のラン専門業者の存在価値が崩れてきたのではないかと言われている。
現在デパート不要論があるように、悲しいかな、ラン専門業者不要論という説も聞いたことがある。「苗メーカー→生産者→卸市場→ホームセンター・ガーデンセンター→愛好団体」で十分であるといった見解である。これには小生にも絶句するしかなった。趣味家の愛好団体の仲間内でランは動いているのである。キャリアを積んだ趣味家が育種、選抜を行い、仲間内で分け合い楽しんでいるのである。つまり年々、ラン専門業者の居場所がなくなってきているのも事実かもしれない。スーパーやホームセンターでほとんどのものが揃う世の中では、確実にデパートの存在価値がなくなってきているのである。それと同様な職種になってしまうかもしれない。
だからラン専門業者としての基本に戻り、世界各地の業者をくまなく捜し、珍しい変わった品種を集め回るしかないだろう。そこで、どんな媒体を用いて、どういう風に宣伝するかが重要な問題となってくる。世界ラン展にとってかわる『新たな展示即売システム』を構築する必要がある。

高級マンションや一戸建てモデルハウスにおけるモデルルームでの展示
インドアグリーンとしての新たなディスプレイの方向性の開発
温室が融合した新たなバスルームなどの開発
一戸建ての地下室でのラン栽培モデルルーム
トレンディドラマの主役の部屋でのディスプレイ
ガーデニングなどの外構工事における温室の捉え方
アルミ素材以外のおしゃれな温室の開発
母の日、父の日、御中元、お歳暮、クリスマス、正月、バレンタインデーにどう利用するかをもう一度考えたいものである。