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ガーデンフィロソフィ
路地裏園芸からオープンガーデンへ
富山昌克
(1)園芸番組から感じるもの〜魅せ方と伝え方の難しさ〜
 園芸番組に出演させて頂くようになって、かれこれ15年になります。園芸番組構成における視点の違いから視聴者が受け取る印象の違いを考えながら、オープンガーデン論に入っていきたいと思います。まずはNHK『趣味の園芸』、サンTV『手づくり花づくり』とNHK『とっておき関西』の違いについて考えてみましょう。

 園芸番組としての歴史はNHK『趣味の園芸』がダントツです。約35年の歴史を持つ番組は類をみないでしょう。
 さらに他の園芸番組と異なる点は、テキストが並行販売されていることです。放映日の約2週間前には店頭に並びます。毎月50万〜100万冊という出版販売数は園芸雑誌のなかではやはり巨大な媒体雑誌といえます。
  TV番組『趣味の園芸』の視聴率は平均3〜10%(関係者からの聞き取りなので確かではない)だから、日本国民1億6千万人のうち、約1000万人近い人が見ていることになります。その視聴者の一割近い人が、テキストを購入していることになるのです。
 テキストがあることで、TV視聴者は番組の内容を予め確認でき、例え番組を見逃したり、聞き逃したりしても、テキストを確認することで、知的欲求を満足させられることが最も大きな特徴といえるでしょう。
 なによりも、「園芸好きな人が好んで見ている」という点が特徴でしょう。長年番組を続けるとマンネリ化してしまうものですが、キャスターや講師の採用により、マンネリ打破の工夫が行われているようです。

  しかし雑誌の方は、取り上げられる植物がほぼ固定しているので、『趣味の園芸』のテキスト購入者は「3年で入れ替わっていく」といったことも聞いたことがあります。
  雑誌は表紙から受け取る印象が大きいので、いかにきれいな表紙をつくるかで販売数が左右されます。20〜30年前の表紙と現在のものを比べてみるとかなり異なります。時代に応じたものに変化させてきたところに企業努力が伺えるし、園芸雑誌売り上げNo.1を維持してきた誇りさえ感じさせます。
 園芸好きな人が「見たあとに必ず安心感・安堵感がもてる」というのがいいのでしょう。園芸ファンに週一度の心の安らぎを与えるということが、社会貢献している最大の特徴かもしれません。
 番組の内容は8割方、鉢物園芸が中心となっています。大きな庭で園芸の是非を問う内容は、番組構成の方向からもまとめにくいのかもしれません。そのできないところを埋めるためにBS-NHK「私のガーデニング」という番組が自然発生的に企画され、別の放送枠で多くの視聴者に支えられているのでしょう。
 一方、関西地域の民放園芸番組では、サンTV『手づくり花づくり』があげられます。こちらも前身の『ファッショナブル園芸』という番組時代から考えると、約20年の歴史がある民放園芸番組です。
  この番組のスポンサーはハイポネックス蠅覆匹留犒欒銅劼砲茲辰道戮┐蕕譴討ていますが、このスポンサーが肥料メーカーや園芸培養土メーカーだと、講師は解説しやすくなります。NHKの場合、商品名を公表できませんが、民放ではいくらでも固有名詞が放送できるところが最大のメリットとなっています。園芸初心者にとっては、『緩効性化成肥料』といわれても、実際店頭で選ぶときに、あまりに商品数が多いため、迷いが生じ、なかなか選びにくいものです。
  しかし、民放園芸番組では、実際に肥料を指し示しながら、『これですよ』と提示できるところが利点です。こちらは趣味の園芸と違って、鉢物園芸があったり、園芸店巡りがあったり、ガーデン探索があったり、様々な試みが行われています。

 また現在大阪NHK『とっておき関西』で行われているガーデニングコーナーは、新たな園芸番組として関西地域に放映されています。もともと情報番組であるため、「園芸好きな人ばかりが見ているわけではない」ので、従来の園芸番組とは違う側面も生まれているようです。
  興味のない人を振り向かせるには、やはり人目を引くディスプレイやパフォーマンス、さらに笑いが必要となってきます。関西における笑いの基本はボケとツッコミなので、キャスターとの掛け合いが非常に重要なポイントとなります。
  アドリブの笑いと公開生放送番組という独特のライブ感覚も生まれ、『園芸と演芸が複合化された』ような番組構成になっています。
  最近は「面白いから見てるよ」とお声をかけていただけるようになりました。私にとってこれ程有り難いほめ言葉はありません。
  「園芸に興味のない方であっても、観ていただけるんだ」という現実が明日への糧になっているのです(園芸研究家ではなく、演芸研究家?)。
 この番組もまた、如何に従来の園芸番組との差別化を図るかということを意識しているように思います。
  鉢物園芸だけに限らず、庭への植え込み法など幅広い内容を意識しているようです。実際にこの番組でこの春にオープンガーデンを取り上げたことがありましたが、予想以上の高視聴率で、スタッフ関係者に驚きを与えたのも事実です。
  それだけ、オープンガーデンに興味を持っている人が多くなってきているということでしょう。
 どの園芸番組であっても、『見せること』、いや『魅せること』がまず念頭にあり、次に『わかりやすく伝える』ということが、最大のポイントでしょう。
  オープンガーデンでは魅せていますか?わかりやすくもてなしていますか?興味がない方が驚き、魅せられ、思わず入ってしまうというように、興味を持っていただくことが大切だと思います。ただ「見てもらいたい」というだけでは文化は始まらないのかもしれません。それは発信側の根底に流れる『魅せるという意識』と、常に時代と共に変化し続けるファッションに即した『新たなスタイル』を打ち出させるかということに結びつくのでしょう。
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